AI活用のイメージ

AIが生み出す「表現・印象」のリスク ― 危機管理広報の視点から

この記事は「AI活用時代の危機管理広報シリーズ」の一部です。AI活用に潜むリスクとその回避法を、文章作成の観点から整理しています。

▼AI活用時代の危機管理広報シリーズ

AIの文章は「整っている」が、それだけでは不十分

生成AIの文章は、文法的に整っており、読みやすいのが特徴です。

しかし、その一方で、

  • 無難すぎる
  • 温度が感じられない
  • 誰の言葉なのか分からない

こうした「印象の弱さ」が生まれることがあります。
文章として成立していることと、適切に伝わることは別です。

表現・印象のリスクとは何か

リスクコニュニケーションにおいては、

何を伝えるかと同じくらい、どう伝わるかが重要

AIの文章には、次のようなリスクがあります。

◾️当事者性が感じられない

AIの文章は客観的で整っていますが、

  • 自分たちの問題として向き合っているか
  • 当事者としての責任があるか

が伝わりにくくなることがあります。

一見問題のない文章に見えたとしても、
誰の立場で書かれているのかが曖昧なままになることがあります。

このリスクが顕在化すると、特に謝罪や説明においては、

当事者としての姿勢が見えない=他人事に見える

ということが起きます。

はっきり言って、 これは致命的です。

◾️温度感がずれる

AIは感情を持たないため、

  • 深刻な場面でも平坦な表現になる
  • 逆に、軽い内容でも重くなりすぎる

といったズレが生じます。

現実が切迫した状況でも、AIは状況の重みを文章に反映するのが苦手です。

これによって情報の受け手との間に温度差が生まれることは、文章の危機管理においても大きな欠落です。

◾️発信者の顔が見えにくい

AIの文章は汎用的で均質化されやすいという特徴があります。
そのため

  • 組織としての意図
  • 発信者の姿勢

が見えにくくなります。

実際の現場では
・毅然として対応しよう
・誠実な対応をとろう
という状況であっても、

発する文章で「危機感がない」「誠実さがない」と思われてしまうと
組織としても信頼を損ねる大きなリスクにつながります。

なぜ広報では問題になるのか

ここまで書いた違和感は、通常の情報発信であれば問題にならない場合もあるでしょう。

しかし、危機時の広報では違います。

印象そのものが評価に直結します。

  • 誠実に対応しているか
  • 真摯に向き合っているか
  • 信頼できるか

すべては、発する言葉、表情、態度から判断されるのです。

内容ではなく「伝わり方」で評価される

これが、危機管理広報における考え方です。

表現リスクを回避するための工夫

主語を明確にする

「誰が何を行っているのか」を明確にする

例:

  • 「現在、確認中です」
    → 「現在、広報部と責任者が当事者に確認中です」

主語をしっかり入れて、当事者としての責任感を表しましょう。

◾️“人としての言葉”で語る

AIの文章は、どこか他人事に感じられます。

人の判断や意思を示す一文を入れ、責任ある態度を示しましょう。

例:

  • 「深くお詫び申し上げます」
  • 「重く受け止めています」
  • 「厳粛に受け止めております」

「誤解があったようですが」などの表現は、責任回避と思われます。
受け手側から「こっちの理解が足りないというのか」と炎上を招くこともあります。

仮に誤解があったとしても、その誤解は説明の不十分さが招いていることが大半です。その場合には

「私どもの説明に不十分な箇所がありました点、お詫びと訂正をいたします」

と表現しましょう。

◾️違和感を見逃さない

読んでいて

  • 少し引っかかる
  • なんとなく冷たい

その感覚を大事にして、修正を行うようにします。」

違和感はリスクのサイン、人だからの感度が受け止める貴重なサインなのです。
丁寧にチェックしましょう。

◾️「伝わり方」でチェックする

正しいかどうかではなく

どう受け取られるか

この視点で徹底的に見直します。

文章の完成度ではなく、受け手の印象で判断する

ここがポイントです。


まとめ

AIは便利です。今後ますます活用が進むでしょう。

しかし、危機管理広報においては、

「正しい」だけでは不十分。
「どう伝わるか」がすべて。

この視点を持つことで、AI活用のリスクを減らすことができます。

AIを活用する場合でも、

・当事者性
・温度感
・主体性

が適切に伝わっているかを確認することが重要です。


次回は、AI活用で「やってはいけない操作」について整理します。