内閣府と気象庁は、北海道から千葉県にかけての182の市町村に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。
「後発地震注意情報」は、日本海溝・千島海溝付近でマグニチュード7.0以上の地震が起きた場合に、その後、発生する可能性がある大きな地震への警戒を呼びかける情報。
20日の三陸沖の地震を受けたもので、今回は27日の17時までです。
この情報は、大きな地震の後に、同じ地域でさらに大きな地震が発生する可能性がある場合に出されるものです。
ただし、余地ではないため、必ず発生するわけではありません。
こうした「起きるかもしれないし、起きないかもしれない」情報は、住民にとっても、発信する側にとっても判断が難しいものです。
しかし同時に、
▶︎「いま何をしておくか」が問われるタイミングでもあります。
この記事では、危機管理広報の観点から、
この情報が出たときに自治体は何を考え、どのように伝えるべきかを整理します。
なぜこの情報は扱いが難しいのか
「後発地震注意情報」は、防災情報の中でも特に扱いが難しい性質を持っています。
その理由は
・「必ず起きる」という予知ではない
・実際に起きる確率は低いながらも(約1%)、平常時(0.1%)の10倍である
ためです。
例えば、
・大きな地震が発生する可能性はあるが、必ず起きるとは限らない
・発生する場合でも、いつ・どの規模で起きるかは分からない
・注意が必要な期間が長く、日常生活との両立が求められる
といった特徴があります。
そのため、
・強く呼びかければ不安を過度にあおる可能性がある
・逆に弱い表現では、行動につながらない
・「結局どうすればよいのか」が伝わりにくい
という状況が生まれやすくなります。
▶︎ 「確実ではないが、無視はできない」
このような情報に対して、どのように伝え、どう行動につなげるか。
ここに、危機管理広報としての難しさがあります。
該当自治体が今やるべきこと
この情報が出たとき、重要なのは「分かりやすく伝えること」だけではありません。
▶︎住民が具体的に行動できる状態をつくることです。
そのために、自治体の広報担当者が押さえておきたいポイントを整理します。
① 情報の意味を「生活レベル」に翻訳する
専門的な情報をそのまま伝えても、行動にはつながりません。
・何が起きる可能性があるのか
・どのくらいの期間、注意が必要なのか
・普段と何が違うのか
これを、住民の生活に引き寄せて説明する必要があります。
例
「後発地震に注意」ではなく
▶︎ 「今後1週間程度は、強い揺れに備えた行動を心がけてください」
② 「何をすればよいか」を具体的に示す
行動が示されていない情報は、実質的には伝わっていないのと同じです。
例えば、
・家具の固定や転倒防止の確認
・避難経路や避難場所の再確認
・家族との連絡手段の確認
・非常用持ち出し品の点検
▶︎ “今すぐできること”に落とし込む
③ 煽らず、「軽視ではなく注意を促す」表現にする
強く言いすぎれば不安をあおり、弱すぎれば行動につながりません。
重要なのは
▶︎ 「必要な注意を、過不足なく伝える」こと
・「ただちに危険ではありませんが」だけで終わらない
・「念のため」だけにしない
▶︎ 行動の理由までセットで伝えることが必要です。
例えば、次の様な表現が考えられます。
【後発地震注意情報が出ています】
確実に起きるわけではありませが、リスクがゼロではありません。
「大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっている」という発表です。
「何もしない」のではなく、「できる備え」を確実にしておきましょう。
▼今できること
・家具の固定を確認
・避難場所の確認
・家族との連絡手段の確認
強い揺れが来る可能性もあります。
落ち着いて、備えを見直しましょう。
備えをまとめたチラシなどがあれば、その画像も活用するとよいでしょう。
④ 継続して発信する前提で設計する
この情報は、一度の発信で終わるものではありません。
・初報(情報の意味と行動)
・フォロー(注意継続の呼びかけ)
・状況変化時の更新
▶︎ “続けて伝える設計”をあらかじめ持つ
⑤ 庁内で認識をそろえる
発信の前提として、
・どこまでを事実として出すのか
・どの程度の強さで呼びかけるのか
を庁内でそろえておく必要があります。
▶︎部署ごとに言っていることが違う状態が最も危険
ここまでのポイント
情報を出すことではなく
▶︎ 「行動につなげること」までが広報の役割
よくあるNG発信
このような不確実性の高い情報では、伝え方を誤ると行動につながらない、あるいは不信感を生む可能性があります。
ここでは、実務で起こりやすいNG例を整理します。
① 情報だけを出して終わる
「後発地震に注意してください」
このように情報だけを伝えても、
・何をすればよいのか分からない
・自分に関係あるのか判断できない
▶︎ 行動が示されていない情報は、実質的には伝わっていない
② 表現が曖昧
「念のため備えてください」
「注意をお願いします」
と注意喚起をするだけでは
・何に備えるのか
・どの程度の注意が必要なのか
が伝わりません。
▶︎ 曖昧な表現は、行動の判断を受け手に委ねてしまう
③ 強弱のバランスが極端
・過度に強い表現 → 不安をあおる
・弱すぎる表現 → 行動につながらない
このどちらも、結果として適切な行動を妨げます。
▶︎ 「伝える強さ」も設計が必要
④ 一度だけ発信して終わる
初報だけで終わってしまうと、
・注意が継続しているのか分からない
・情報が更新されているのか不明
▶︎ 「続報がないこと」自体が不安や誤解を生む
⑤ 庁内で表現がばらつく
部署ごとに異なる表現で発信されると、
・どれが正しいのか分からない
・情報の信頼性が下がる
▶︎ 発信の一貫性が崩れると、それ自体がリスクになる
NGな表現に共通する問題
これらに共通しているのは、
▶︎「受け手の行動まで設計されていない」こと
情報を出すことと、行動につながることは別です。
その間をつなぐのが、危機管理広報の役割です。
まとめ
「後発地震注意情報」のように、必ず起きるわけではない情報の場合
▶︎何が起きるかだけでなく、
▶︎どう行動につなげるかが問われます。
自治体の広報に求められるのは、
・情報の意味を分かりやすく伝えること
・具体的な行動に落とし込むこと
・強すぎず、弱すぎない表現で伝えること
・継続して発信すること
です。
▶︎ 情報を出すだけでは不十分
▶︎ 行動につながって初めて意味を持つ
私たちのこの国は、いつどこで大きな地震が怒らないとも限りません。
日頃からの地震の備えを再点検するチャンスとも捉えられます。
適切に伝えることで、住民の備えにつなぐことができます。
「何を伝えるか」だけでなく、
「どう伝わり、どう動いてもらうか」まで考えること
これが、危機管理広報において求められる視点です。
