自治体や企業の情報発信で、AIが積極的に使われるようになりました。
それとともに、広報の現場でも見落とせないリスクが増えています。
この記事では、その全体像をリスクコミュニケーションの視点から整理します。
▼AI活用時代の危機管理広報シリーズ
- 第0回:AI活用に潜むリスクとは何か(この記事)
- 第1回:AIに任せすぎるリスク
- 第2回:表現・印象のリスク
- 第3回:AIでやってはいけないNG操作
生成AIの活用は、自治体や企業の現場にも急速に広がっています。
特に、文章作成や情報整理などの工程で業務効率を高めるツールとして、多くの場面で利用されるようになりました。
一方で、「便利だから使う」「時短になる」というだけでは見落とされがちなリスクも存在します。便利さとリスクは表裏一体なのです。
AI活用はなぜリスクを伴うのか
下書きやアイデア出しなどを秒速で手伝ってくれるAI。
非常に優れたツールですが、情報発信の良し悪しや物事の判断をできるわけではありません。
AIは
- 文脈を完全には理解していない
- 組織の意図や背景を知らない
- 社会的な影響を評価できない
そのため、
AIに丸投げはできない
ことを前提とする必要があります。
AI特有のリスクの構造
AI活用のリスクを、大きく次の3つに整理できます。
① 任せすぎることのリスク
AIは衆知の結晶。
そのことを過信するあまり私たちは
- 判断を省略してしまう
- 内容の確認が甘くなる
- 責任の所在が曖昧になる
という状態に陥ります。
例えば、謝罪文。
- 今このタイミングで出してよい内容か
- 関係者への配慮は十分か
- 受け手にどう受け取られるか
といった、本来人が判断すべき要素が抜け落ちている可能性があります。
AIは「それらしく整った文章」を作ることは得意ですが、
状況に応じた判断をすることはできません。
効率化を重視して任せすぎることから起きる問題でもあります。
人が「判断する」工程が抜け落ち内容、注意が必要です。
② 表現・印象のリスク
AIの文章は整っている一方で、
- 無機質に感じられる
- 情報が薄い
- 当事者性が感じられない
- 誰が言っているのか発信者の“顔”が見えない
といったことも起きます。
例えば、事故やトラブルに関する説明文。
AIで生成した文章をそのまま使うと、
・事実は書かれているが、当事者としての姿勢が見えない
・謝罪の意図はあるが、言葉に温度がない
・誰が責任を持って発信しているのか分かりにくい
といった状態が起こりがちです。
「他人事のように見える」 「誠実さが伝わらない」
と受け取られた時点で、広報においては信頼に直結するリスクになります。
③ 情報を取り扱うときのリスク
- 個人情報の入力
- 未公開情報の取り扱い
- 誤情報の拡散
日頃最新の注意を持って取り扱っているこれらの情報。
情報セキュリティにおいて、不適切な使い方をすれば、
重大な事故につながる可能性もあります。
特に「誤情報の拡散」について言い添えておきます。
例えば、「文章の要約」をAIに任せた場合、自動生成された文章が本の文章の意味を正確に反映していないリスクもゼロではありません。
生成された情報の元リンクを確かめると、不確かな情報源であることも少なくありません。
情報が正確か、文章が正確か。手放しにはできず、必ず人の目でチェックする必要があります。
まとめ:AI時代のリスクコミュケーションとは
AIは「使うか使わないか」ではなく、
「どう使うか」が問われる時代に入っています。
自治体広報における文章づくりでAIを活用する際は、
- 判断をAIに委ねないこと
- 最終責任は人が持つこと
- 伝え方の意図を常に確認すること
AIは補助であり、主体ではないと考えるのが賢明です。
あくまで「速筆の助手」として活用する──
この前提を崩さないことが重要です。
このシリーズで扱う内容
このシリーズでは、AI活用における文章面でのリスクを具体的に整理していきます。
- AIに任せすぎることの危険性
- 表現や印象に与える影響とその回避法
- やってはいけない操作(個人情報・未公開情報)
- 自治体・医療・教育など分野別の注意点
- 実務に活かすガイドラインの考え方
単なる注意喚起ではなく、
実務で判断できる視点を提供することを目指しています。
AIは、使い方次第で大きな力になります。
しかし、その便利さゆえに、見えにくいリスクも同時に広がっています。
危機管理広報で最優先すべきは
「効率」だけでなく「信頼」を守ること
これに尽きます。
この「AI活用時代の危機管理広報シリーズ」が、
AIを適切に活用するための判断の軸となりますように。
次の記事は 第1回:「AIに任せすぎるリスク」です。
