危機管理広報とは何か ― 求められる「伝える力」

本記事は「危機管理広報の基本シリーズ」の一部です。
危機発生時の考え方から実務対応までを、段階的に整理しています。

災害、事故、不祥事、感染症、そしてSNSでの炎上。
現代社会において、組織は常にさまざまな「危機」と隣り合わせにあります。

では、こうした状況の中で求められる「危機管理広報」とは何でしょうか。
その前提となる「危機」や「危機管理」の考え方から整理していきます。


現代社会の危機とは何か

現代の危機は、大きく2つに分けることができます。

●自然災害による危機

地震、台風、大雨、洪水、土砂災害など、自然現象によって引き起こされる危機です。
近年は気候変動の影響もあり、被害の甚大化・頻発化が指摘されています。

●社会リスクによる危機

感染症の拡大、事故や不祥事、情報漏えい、システム障害、
SNSでの誹謗中傷や炎上など、
社会や組織の中で発生する危機です。
ソーシャルリスク(Social risk)ともいわれます。

現代人は、こうした複数のリスクに同時にさらされながら生活しています。
そして、多くの危機は「突然起きる」「影響が広がる」という共通点を持っています。

危機管理とは何か

「危機は起きるものであり、管理できるものではない」
「起きてから考えればいいんだ」
そのように感じる方もいるかもしれません。

しかし、危機管理とは、
危機そのものを完全に防ぐとか
コントロールやマネジメントを行うという意味ではありません。

まず押さえておきたいのは、
危機には次の2つの段階があるという考え方です。

●リスク(Risk)

まだ発生していない、顕在化していない状態
(例:災害の可能性、潜在的なトラブルの芽)

●クライシス(Crisis)

すでに発生し、影響が表れている状態
(例:災害発生後、炎上発生後、事故発生後)

危機管理とは、この両方に関わるものです。

  • リスクをできるだけ発生させないための
     リスクマネジメント(予防・備え)
  • クライシスが発生した際に影響を最小限に抑えるための
      クライシスマネジメント(対応・回復)

すべての危機を防ぐことはできません。
しかし、関わり方次第で「起きにくくすること」「影響を小さくすること」は可能です。

企業であれば組織内、
自治体であれば行政区域内において、
こうした一連の対応を行うことが「危機管理」です。

危機管理広報とは何か

では、その中で広報はどのような役割を担うのでしょうか。

危機管理広報とは、

リスクマネジメントおよびクライシスマネジメントの過程において、
社会や生活者と適切なコミュニケーションを取りながら行う広報活動
です。

危機時の情報発信は、

  • 正確であること
  • 分かりやすいこと
  • 適切なタイミングであること

が求められます。

そしてそれは、単なる「情報の伝達」ではありません。

人の行動に影響を与える
組織への信頼を左右する

つまり、
状況そのものに影響を与える行為です。

だからこそ、危機管理広報には、
平時の広報とは異なる判断力と設計力が求められます。


まとめ

自然災害は年々甚大化し、
社会リスクもまた複雑化・増大しています。

こうした時代において求められるのは、
一方的な情報発信ではなく、

社会や生活者と向き合い、信頼関係を築くコミュニケーションです。


自治体や企業の広報担当者にとって、危機管理広報は特別な業務ではなく、日常業務の延長線上にあるものです。
平時からの備えと考え方の整理が、いざというときの判断と行動を大きく左右します。

危機管理広報365では、
発信者と生活者の双方の視点を行き来しながら、
実務に活かせる考え方と具体的な方法を発信していきます。

企業や自治体の発信を担う広報担当者が
「何を、どう伝えるか」に迷ったとき、
その判断の拠りどころとなる場を目指します。


●次は 「 第1回:なぜ炎上するのか 」について解説します。