西日本豪雨とは

2018年の「西日本豪雨」からもうすぐ5年が経とうとしています。西日本豪雨とは、「平成30年7月豪雨」(同年7月9日に気象庁が命名)のこと。記憶に新しい人も多いでしょう。
2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方など広い範囲で発生した集中豪雨です。

数日間続いた大雨は、河川の氾濫や浸水害、土砂災害を発生させ、死者数が200人を超える甚大な被害となりました。
そもそもは、同年6月29日に発生した台風7号と梅雨前線の影響を受けたもの。特徴と要因が気象庁の資料に詳しくまとめられています。

防災対策としてできること

多くの死傷者を出し、家屋にも甚大な被害をもたらした災害に対して、私たち、国・自治体・個人は何ができるでしょうか。
防災対策であることは言うまでもありません。
しかし、防災といっても自然災害自体を防ぐことはできません。少しでも被害を減らす、つまり「縮災」ですね。

そのためには、次の3つが必要です。
【防災対策 3つのポイント】
・「防災の三助」を徹底する
・個々の防災意識を高める
・被災の記憶を風化させない

「防災の三助」を徹底する

「防災の三助」とは、自助・共助・公助のことです。
「じじょ、きょうじょ、こうじょ」と読みます。
・自助……自分の身は自分で守る(自分、家族単位)
・共助……隣近所の助け合い
・公助……行政による対策・整備・救助・支援

災害への備えは、この3つが必要です。
個人は、個人として、地域としてできる備えをします。
そして、「公助は国の仕事だから」と無関心や国任せはいけません。どのような対策が行われているか、常に関心を払うようにしましょう。

また、どんなに個人が努力しても、河川や道路が脆弱だとなすすべがありません。国や行政による公助は何をおいても大前提です。河川や施設の整備、避難所の開設、再建の支援などは、国家の使命でしょう。
年々「災害ボランティアが足りない」というニュースが流れますが、そもそもボランティアはあくまで善意のボランティアであって、前提となるのはおかしいのです。出水期には日本各地で水害が起こります。ボランティア頼みでは成り立ちません。
行政の防災担当者も専門知識のある人材を増やす必要があります。そのための給与も増額されて然るべきでしょう。

自助、共助、公助、この3つが揃ってこその防災対策を徹底する必要があります。

個々の防災意識を高める

自分の命を自分で守るためには、次のことを心がけます。

【知る】住んでいる地域のリスクを知る
ハザードマップなどで、住んでいる災害のリスクを把握します。
もしもの際の避難場所、連絡方法なども確認しておきましょう。
気象情報、災害情報にも敏感になりましょう。

●【備える】防災用品を備える
非常用品は時々チェックするようにしましょう。

【参加する】防災活動に参加する
日頃からの防災訓練が生かされた例はいくつもあります。
地域の避難訓練にはなるべく参加しましょう。
お互いに顔を覚えておくと、協力し合うにも早いのです。

被災の記憶を風化させない

防災週間や災害のあった日など、定期的に防災用品をチェックしよう

災害は、被災した方々にとっては、風化しようがなく、片時も心から離れないような出来事です。しかし、ニュースで聞いた他の地域の人々の記憶は、残念ながら薄れていくこともあるでしょう。
風化させないための取り組みを次に掲げます。

●情報発信による防災の啓蒙
地震は予測がむずかしいですが、台風や水害・雪害など昨今の天気予報はかなり的確です。自治体や関連団体では、SNSなどの情報発信で地域住民に呼びかけましょう。災害の恐れがない日でも、過去に災害のあった日、防災週間、梅雨入り……など、防災意識を高めるきっかけになる日は1年のうちたくさんあります。事前に発信のためのカレンダーをつくるのもよいでしょう

●伝承施設・防災センターのと研修・見学
国内には、甚大な被害を受けた施設をそのまま残したり、災害の記憶を保存する伝承施設がいくつかあります。
また、防災を学ぶ防災センターなども各地にあります。
地域・学校単位での見学や研修はもとより、個人の見学も促進するよう心がけましょう。

現在日本では、人口減予算減などが理由で、一度建てられた施設が取り壊されることも出てきています。
しかし。防災を学ぶ場はこれからの日本や私たちにとって大切なこと。維持され、十分に活用されるよう、情報発信も施設任せにせず、行政や住民が協力していく必要があるでしょう。
坂町災害伝承ホール(広島県坂町)……西日本豪雨の伝承
震災伝承施設(東日本各地)……東日本
全国災害伝承情報……防災に関する展示施設や体験施設(総務省消防庁より)

●節目の式典や復旧の確認
西日本豪雨から5年。当時関連死も含め75人が亡くなった倉敷市では、7月6日に行ってきた追悼式が2022年より拡大して行われています。
→ 西日本豪雨から5年 倉敷市は追悼式の規模を大幅に拡大へ 岡山

また、岡山県では堤防工事などの進捗を高梁川流域の4市で確認。梅雨を前に、市の市長が大雨への備えについて国や岡山県と意見を交換を行ったそうです。
→ 西日本豪雨からまもなく5年 堤防工事などの進捗を高梁川流域の4市で確認 岡山県

広島・熊野町では、メッセージとひまわりの種を空に飛ばしたそうです

研修や見学に活用される地域の防災センター

過去の体験を未来に活かして

災害が多発し、人口減に歯止めがかからず、経済成長もままならない……とため息が出ることもあります。
それでも、ひとりひとりが今できることを続けることが、少しずつでも未来の景色を変えることにつながるでしょう。

過去の体験を未来につなぐこと。亡くなった方々の命を無駄にしないこと。
語り継ぐ人が1人でも増え、助かる命が1人でも増えることを願ってやみません。